2016年12月30日金曜日

広州, Guangzhou/埼英(韻)影音




広州の盛賢大沙頭旧貨市場で撃沈したが、約10年前の情報だけど中山六路沿いと付近にも二手市場がいくつかありレコード屋がたくさんあったという情報がある。
なにぶん情報が古いので後回しにしていた。気持ちを切り替えて行ってみることにした。
10年前の情報を頼りに1ヶ所づつ回ってみるも、レコード屋の形跡さえも見つけられない。最後の可能性を信じ上の写真の青い建物、新陶街電気電子城という市場に到着するも、かなり前だろうか、閉鎖され廃墟になってる。


しかし建物の手前には路地があり、まだ電気街が取り残されているのが見てとれた。二手市場があった頃には一体となって賑わったのだろうか。
レコードのかすかな匂いを嗅ぎわけ、路地を入って行った。


ひとつづつ店をチェックしていくと、ズタボロレコード発見。
やはりこの一帯、往時にはレコードを扱う店がたくさんあったに違いない。名残をやっと発見した。


しかしこの時点ですでに日が沈み夜になってた。みんな店じまいをしだしている。
もう諦めるかと思った途端、一本の小路が目に入ってきた。禍々しく異様なオーラを発している。体が自然に小路に吸い込まれた。


どーん、あった!レコード屋が!埼英影音越秀店。


おばちゃんが片言の「イングリッス」で接客してくれる。
おばちゃんどーやら日本の演歌や歌謡曲が大好きらしく、その線のレコードが結構ある。広州では初めて日本の音楽のレコードを見た。洋楽、ジャズ、香港経由の邦楽や他は広物も豊富に品揃え。


演歌は欲しくないので、レコード墓場から演歌だと勘違いして拾ってきたと思しきレコードを救出。
Various/琉球フェスティバル'74、120元。
副題の通り風と水のリズムを感じられる極上のライブ。
最初150元だったが100元にしてくれとねだるも、おばちゃんは決して折れなかった。


店内を見回しているとこんなものを発見。どう見てももう1店舗あるよと書いてある。上の海珠店の付近にはちょっと前にネット検索で1件だけレコード屋を発見していたが情報をどっから拾ったのか失念していた。再度調べても詳細が分からない。しかしこの広告のおかげで点と線が繋がった。


翌日住所の場所、佳東音响城に行ってみることに。地下鉄の駅からは結構歩かないといけない。


ある!レコード屋が!今の渋谷よりある!


昨日のおばちゃんの姉妹店発見。埼韻影音海珠店。
おじさんガラス越しにCDの隙間からこちらをにらんでいる。
と思ったらパソコンでマージャンゲームに熱中している。


写真に撮らなかったけど購入、The Sahib Shihab Quintet/Seeds、110元。
極上のラテンジャズダンサー。見慣れたドイツ盤と違ってジャケが二色刷なのでブートかと思うも当時のUK盤。こんなレコードがひょいと紛れているとは中国のレコード屋は恐ろしい。おばちゃんと違って何も言わないのに10元割引いてくれた。

2016年12月26日月曜日

広州, Guangzhou/盛賢大沙頭旧貨市場




ところ変わってまたまた中国本土、香港を脱出し広州市へやってきた。
ここは今回の中国大陸レコード屋、エサ箱巡りのハイライトとして自分の中で位置付けている。数年前初めて上海でレコード屋を訪れた際になぜこんな海外のレコードを確保できるのだろうかと心の片隅で疑問が残った。リアルタイムで海外の音楽が、しかもレコードで聴かれていたわけではないのに…
しばらくして情報を得るのだが、広州は世界中から廃棄されたレコードが集められリサイクルされるという工場があるらしい。
下の記事は上海のレコード屋のインタビューだが、これを初めて読んだ時身震いをしたものだ。正に中国の広州は地球上のレコード墓場なのだ。
http://genjingrecords.com/archives/4306
ある者はトン買いしたり、ある者は1週間ぶっ通しで掘り倒すらしい。
そんな夢のような場所があるのか!なんとか自力でこのレコード墓場を発見したい。
なんで中国なんかでレコードを掘ってるかっていうと、そういうことなのだ。しかし言葉も通じない巨大な広州でレコード墓場を発見するのは至難。協力者を得なければならない。


ということでやってきたのは中古レコード屋が密集するというビル、盛賢大沙頭旧貨市場。中国の典型的な電気街の中の二手(中古)市場、地下鉄のレッドラインの東湖駅が最寄りだ。
中は黒人がいっぱい、中国人7、黒人3の割合。現地在住者と海外からわざわざ買い付けだろうか?


3階にレコード屋群発見、エサ箱をチェックすると正に墓場から掘り起こしてきたようなどうしようもないセレクション。
しかし別の意味でテンションアップ。レコード墓場の噂は本当のようだ。


広物がちょびっとあるぐらいであとはほぼクラシックしかない。
ジャズとかポップはないの?とおばちゃんに聞くと、


連れていかれたのはここ。しかしやっぱりゴミばかり。
このビルのレコード屋はレコード墓場からレコードを拾ってきているのは間違いない。しかしクラシックは見境なく拾い、数少ないロックポップスもゴミなのでロクなものはない。これは掘り出し物に当たる確率はかなり低い。米盤、日本盤がほとんどだ。


やはりレコード墓場に直接乗り込むしかない。情報が必要だ。
割と若く英語が通じそうな雰囲気のおばちゃんに狙いを定めアタック。でも全然通じない。イラスト混じりの筆談で10分くらい粘るが、こっちの意図が全然伝わらなかった。ここで心が折れてしまいこの盛賢大沙頭旧貨市場を後にした。
レコード墓場への道のりは想像以上に険しい。

2016年12月25日日曜日

香港, Hong Kong/そのほかのレコード屋




香港のその他のレコード屋をご紹介。
まずは香港島は金環と銅鑼湾の中間にある商業ビルの地下街にあるTime Traveler。
英米のレコードが充実。広物や和物コーナーもある。Ned Dohenyのシングルを購入した。


九龍城跡の公園横にあるイーオンの向かいの通りにある酉辛影音。CDショップだが中古レコードの取り扱いがあるのを発見。
広物しかないが、上に積まれた荷物が邪魔かつ紐で縛ってあって見せてくれなかったエリアがある。きっとレア盤が混ざっているに違いない。


香港島の有名な骨董通り摩羅上街には数件のレコード取り扱い店が点在している。
写真の店でエサ箱をガサゴソしてたらSP盤トラップ!バリッと音を立てて割ってしまう。後ろの店先を振り返ると若い男の子が店番、SPの割れる音なんて知らないのだろう。


中環にあるChoice Hi Fi。日本盤やJazz日本盤再発物など新品が充実。オーディオ用品などもこだわりの品揃えをしているようだ。


中環のエスカレーター脇にあるWall of Sound。看板のとおりレコード、CDをオールジャンル品揃え。タイミングがよければ掘り出し物がでるかも?

2016年12月16日金曜日

香港, Hong Kong/Classics







ところ変わってこちらは香港島は中環。有名な中環のエスカレーターのすぐ近くの建物の2階の1室にある。落ち着きのある物腰の柔らかい90年代香港映画スターのようなイケメン男性店主。





店内はオールジャンルを品揃え。在庫量も膨大だ。





The Wild Cats/Disco Cats、HKD70。
韓国からの出稼ぎグループ。なんていなたいジャケット。





Teresa Carpio/ST、HKD70。
2枚目。同じようなレコードばかり買ってしまう。

2016年12月15日木曜日

香港, Hong Kong/偉豊音響





こちらも深水埗のレコード屋さん「偉豊音響」。鴨寮街の終点から欽州街を右に曲がってすぐのところにある。中にはニコリとも笑わないメガネのおばさんが店番をしている。3回通ったが、3回目に挨拶をすると微かに表情を緩めて挨拶を返してくれた。


Judee Sill/ST、HKD80。
珍しいシンガポール、マレーシア、香港向けにプレスされた東南アジア盤を発見。みずみずしい歌声が下痢で脱水症状の体に染み渡る。


ちなみに鴨寮街の終点の角には「業成水電工程」という看板の下に愛想ゼロのばーさんレコード売っているところがあったが中身はズタボロだった。

香港, Hong Kong/Paul




深水埗にはまだまだレコード屋がある。地下鉄出口Cの目と鼻の先マンション内、ポールおじさんのレコード屋だ。
ドアのベルを鳴らすと中にポールおじさんがいて入れてくれた。
ポールおじさんはヨーダとスメアゴルを足して2で割ったような初老の男性。
中に入るとビックリ!レコードダンボールが何層にも積まれている。レコード屋というより倉庫だ。そしてここに住んでいる。マンション住まいというよりレコードに住んでいるのだ。レコードで出来た階段を昇り降りしせわしなく奥の部屋とを行き来している。


「来年で60歳になるけどオイラはまだ60年代のレコードを売っている」
彼の半生を題材に小さな本が出版されていたり香港レコード界きっての有名人のようだ。ベトナム戦争から帰還し、香港のストリートでレコードでのし上がったらしい。
次々に地元ディガーやレコードを売りに来る人、そして奥さんと娘さんまでも入ってきて立っているスペースがない。昨日はレコスケのイラストレーターとして有名な本秀康氏が訪問されたそうだ。お土産の川本真琴の可愛い7インチを見せてくれた。きっとあれもポールおじさんの住処の一部になるのだろう。
Hang Sing LP Recordsで購入したThe New Topnotesのレコードを見せるとダンボールから色々出してくれる。そして水を盤面に吹きかけ、レコードを再生してくれる。そして普通のティッシュでゴシゴシする。ミクロの傷が量産されるのでやめてくれと頼むが、ポールおじさんはなかなか頑固者で止めようとしない。


Unknown Artist/7-A-Side、HKD120。
当時このレコードを購入すると7UPを2本おまけでもらえたそうだ。覆面バンドによるソウル・ディスコ。
傷が多く他のやつに取り替えてくれと頼むがもう持ってないと言われ渋々購入。多分絶対いっぱい持ってる!ホテルで聴いたら案の定針飛びが…とほほ。


潘迪華/我愛你、HKD980。
熟考後後日また訪れレベッカ・パンを購入。レベッカのDiamondレーベル時代の中ではこれが一番珍しい気がする。60年代の香港の粋、芳醇なコスモポリタン歌謡。HKD20だけディスカウントしてくれた。


2016年11月18日金曜日

香港, Hong Kong/Hang Sing LP Records




翌日また深水埗に向かう。目指すはHang Sing LP Records。
ネットの地図上の場所が間違っているのか、昨日は見つけられなかった。
住所はあっているはずなので地図とにらめっこし目星を付けて行ったらちゃんとあった。


2階の狭い店内にレコードがギッシリ。
おじさんが店番しているも、英語が全く伝わらない。
レベッカ・パンありますかと言っても伝わらない。筆談する。レベッカ・パンの中国名なんだっけ?思い出せない。Diamondレーベルと書いたらやっと分かってくれて…Diamondレーベルのまとまった棚を教えてくれた。



レベッカ・パン、ジャケがずたボロ、HKD980。買えない。



レベッカ・パン、ジャケはまあまあ、HKD1980。もっと買えない。

テレサ・テンやなんかも豊富に品揃え。暫くすると英語が可能な短髪のチャキチャキした感じのおばさんが昼飯を持って現れた。娘さんかな。
HKD100のレコードをベリーベリーチーププライスと言っている。


The New Topnotes/Here Comes Love、HKD100。
昨日に引き続き。視聴させてもらいこっちも中々良かった。


この店のショップバックを見てビックリ。片面はレコードショップ、もう片面は…え?この店は靴屋兼ねているのだ。
どうりで10インチの上にドクターマーチンが乗っていると思ったら。


地図を載せるので迷う人は減るでしょう。西九龍中心というショッピングセンターの右斜め向かいにある。

香港, Hong Kong/Ducky's Vinyl Records(ボコーダーおじさんあらわる) +HO唱片行








中国本土深圳からいよいよ香港入り。香港編の始まりだ!

越境の緊張からか下痢が止まらない。お腹は全然痛くないのが救いだ。





香港のレコードショップに関してはインターネット上にたくさん情報があるし、香港に着いてから調べればいいやと思ってたので事前に何も調べていない。

旺角で取った安宿があるビルの2軒となりのビルにレコードショップがあった。歩いて1分で行ける。知らず知らずのうちに養われたレコードレーダーが反応してたのだろうか?
ここ旺角は世界でも指折りの人口密度を誇る。レコード屋も集中していて何軒かに行ってみたが収穫があったのはこの店のみ。





Ducky's Vinyl Records/得記唱片。





マンション系のレコード屋だ。エレベーターを使いフロアを上がる。

不思議と入るのに緊張は全くない。初めてなのに心はまるで常連気分だ。

扉を開けると1万枚以上はある大量のレコードと男女が二人立っている。女性は40代半ばくらい、男性は60代か。

きっと男性が店主なんだな。女性はきっと音楽ライターだろうと妄想する。



暫くすると男性の方がビヨーンビヨーン的な間の抜けたロボットのような声で話し出した!



腰を抜かしそうになるも、下痢をしてるので脱○しないためにもなんとか持ちこたえた。ここは人間の皮を被ったロボットが昔の人間がつくったレコードを収集する近未来都市なのか?!

ビックリしてロボットを見る。すると話すときに胸ポケットから何かを取り出してそれを喉にあてがっている。

男性はロボットではなく、ただ単に喉に障害を持っているようだ。会話を補助する器具を使用しているみたいだ。タバコの吸いすぎだろうか?心の中で密かに愛を込めてボコーダーおじさんと名付けた。



とんでもない所に来てしまったと動揺するも、勘違いと分かりすぐに気持ちを持ち直しレコードをホリホリ。

入り口付近は英米のロック・ポップスが多いな。

店の中央にはジャパニーズコーナーなんかもある。松田聖子、谷村新司、The ALFEE…。後で他の店で教えてもらうが、香港にあるこういった70、80年代の日本のレコード、そして90年代の安室ちゃんなどのCDは当時リアルタイムで大量に輸入され、香港人によって聴かれていたものだそうだ。日本を含めた東アジアは映画や音楽、ファッションなどを介してひとつながりのマーケット、文化圏を形成していたのだ。なんだかノスタルジーを感じる。





ボコーダーおじさんはレコードを視聴し始める。なんだ客だったのか。

深圳で感じた広物ブーム(コウブツブーム、80年代の広東ポップスを主とする)を肌で感じるためにジャケットを頼りに20枚くらいチョイスし視聴。

店の視聴機はボコーダーおじさんによって占拠されてるので持参した自前のターンテーブルで。

しかしどれを聴いてもシックリこない。予想では10枚に1枚くらい良質なシティーポップ的なものや、バレリックなナンチャラなニューディスカバリーがあるはずだったのに。どうやら80年代の音に広東語の歌が乗ると凄まじく硬い印象のポップスになってしまうようだ。はっきり言って苦手。





深圳でも香港でもやたらと高い鬼太鼓座。なんでだ?

広物を諦め代わりに70年代の英語詞ポップスにシフト。





Teresa Carpio/ST、HKD98。

伸びやかなボーカル、フリーソウル的というかなんというか、今の時代にもしっかりフィットするボトムのしっかりしたポップス。いい!





The New Topnotes/Where Do We Go From Here、HKD88。

香港的ではないエスニックな顔立ちのジャケットとSea Windのカバーに反応し視聴して大正解。ファンキーでメロウ、ソウル・ディスコ系グループ。



ボコーダーおじさんはいつの間にかいなくなっていた。

代わりに会社をサボって縦置きクラシック棚をしゃがんでディぐる若者の姿が。

長居すると下痢が心配なので、女性店主に何故かディスクユニオンのレコードバックに2枚のレコードを入れられ1時間ほどで退店。

安宿に戻り休憩し今度は少し北上し深水埗の電気街へ。この一帯にレコードショップが複数ある。

しかし夜になり閉店するような時間だ。1件だけ。





HO唱片行。電気街のメインの通りにあるが、それの南側に交差する通りを渡った向こう側、ひっそしりした場所にある。CDメインで広物レコードも300枚くらいあった。夫婦で店を営んでいるようだ。





Teresa Carpio/ST、HKD90。

昔からの有名盤、フリーソウルクラシック。香港のレコードはわりと綺麗なものが多い気がする。